平成22年11月6日と7日、山陽新聞「さん太ホール」(岡山市)で開催した、オリジナルファミリーミュージカル『桃太郎と温羅』(ももたろうとうら)をご紹介いたします。
原作者より
三原静
岡山県には、桃太郎にもまつわる像やグッズがたくさんあります。
また、鬼を温羅といい、夏祭りにもなっているほどです。
なぜ、岡山県では鬼がヒーローなのでしょうか。有名な「桃太郎」のお話しでは、鬼は悪者なのに・・・
この地方には多くの、鬼伝説もあり、それらを考えると、どうも鬼は悪者ではないらしい。
いったい、温羅はどういう経験を持つどんな人物(生き物)だったのか。
一方、なぜ桃太郎は桃から生まれたのか、吉備団子とは何だったのか、サル・イヌ・キジとは何だったのか。
なぜ、鬼ヶ島で決闘したのか。
思うに、吉備の国の人は、全国に知られた「悪者としての鬼」ではなく、温羅の本当の姿を知っていたのではないでしょうか。
温羅がどういう人物で、この土地のためどれほど貢献したのか、それを地域の人は知っていた。それが、鬼をヒーローとして扱う理由なのでしょう。
そこから、
温羅と桃太郎は、実は友人だった。
時代の流れはその二人の友情を引き裂こうとした・・・そして二人は決断する。
という、このミュージカル「桃太郎と温羅」が完成しました。
もっとも、今回の桃太郎と温羅は、原作とは大きく異なるものであり、その意味で、演出者の作品であると考えています。
ANOTHER STORY
アハデェ
いつかこのお話しも皆さんにお見せできる日を楽しみにしています。
アフリカの大地。
その豊かな自然に覆われた平和な村にも世界中から時代の波が押し寄せていた。
医療が進まない村では、現代の医療なら当然救える病気でも、命が失われていく。
村人の安全を守るためには、開発に協力すべきなのだろうか。
それとも開発を拒み伝統を守るために、助かる命を見殺しにするのか。
強引な開発を承諾させる目的でこの地にやってきた隊長は、村を二分しようと画策する。
そんな中、彼の一人娘は、祭りの夜、この土地に伝わる死に至る病に冒されてしまった。
これを直す薬を手に入れる方法はただ一つ。
恐ろしくどう猛なウーが住み、まだ誰も戻った者のいない、死の谷と呼ばれる場所にある薬草を手に入れなければならない。
しかもその薬草は取ろうとすると、さらに強い毒草に変わってしまう。
そこには自然と人間の間には、守らなければならないアハデェ(約束)があった。
(三原静)
ANOTHER STORY
メモリー
近い将来、このお話しも皆さんにお見せできる日を楽しみにしています。
現代、日本の都会。
周囲からは「変人」と呼ばれる自称天才科学者がいた。
彼は、長年の研究の末、ついに、ある装置を発明した。
それは、人々の脳から、ある一定部分の記憶を取り除くものだった。彼によれば、トラウマになっているショッキングな記憶を取り除くことで、人々を幸福にできるという。
だが、彼の研究に反対する学者は、彼の装置が「記憶の売買」という犯罪に利用されるのではないかと批判した。
その科学者が住む同じ都市の企業に「切れ者」と呼ばれる、若手経営者がいた。その経営者は、人に対して、絶対に甘い顔を見せず、周囲から実力は認められるものの、決して好かれてはいなかった。彼は従業員の仕事ぶりに不満を抱いていた。中でも、優しいが冴えない男を嫌っていた。彼は仕事が遅い人間は価値が無いとすら思っているようだ。
その冴えない従業員といえば、社内では目立たない存在だが、みんなに優しく人に好かれ、家族とささやかだが幸せに暮らしていた。彼には、子供の成長と家族と過ごした幸福な時間だけが財産だった。
ある日、その男のかけがえのない子供が事故に遭い、大きな治療費が必要になった。だが、彼に大きな貯蓄はなく、そんな費用は作れるはずもなかった。どこでお金を借りようとしても、かなわず、最後の手段として、彼を嫌っている経営者を訪ねた。
そんな彼が最後に出した答え、それは、彼のたった一つの財産、「幸福な記憶」を売ることだった。
幸せな記憶を売ってしまった彼に待ち受けているのは・・
(三原静)